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【1】-3:ありがちすぎるけど

 出産後も母親同士の親交は続き、必然的に子供連れで会うのが普通だった。だから文字通り生まれた時から……否、生まれる前からの付き合いになる。
 高校で女子高と共学に分かれるまでは、幼稚園から中学までも同じだった。大学に関しては、柊はもともとK大が第一志望であり、奈央子は本命の国立大学に不合格だったため、いくつか合格していた私立の中からK大を選んだ。
 ——いや、最後に関しては、半分は嘘である。
 奈央子は、幼なじみが第一志望に受かったことを知った上で、ここを選んだのだから。

 凄まじくありがちすぎて、自分でも呆れてしまう時がままある。
 それでも、奈央子は柊が好きだった。
 幼なじみとしてだけではなく。

 「そもそも、どうしてそんなに好きなわけ?」
 「……うーん」
 彩乃に問われて、ちょっと考えた。
 そう聞かれるのはこれが初めてではない。
 彩乃とは中学1年で同じクラスになってからの付き合いで、高校も同じ女子校だった。柊への気持ちを打ち明けた数少ない相手でもある(というより、彩乃の方が先に感づいて尋ねてきた)ので、中学時代から何度となく繰り返されてきた問いであった。
 ——実のところ、自分でもよくわからない。
 深く考えたことがない、というよりも、考える以前のことだというのが正直なところだったから。
 物心つく前から、当たり前のように近くにいて。
 一緒にいることがただ純粋に楽しかった。
 もちろん女の子の友達はいたし、普通に遊んでもいたけれど、誰よりも長く一緒にいたかったのは、いつでも柊だった。
 そんな想いが、気づいた時には恋心として、自分の中にしっかり根付いていた。
 「……わかんないな」
 だから、この答えもいつも同じだった。具体的に理由が言える問題ではなかったから。
 それきり何も言わず、カレーライスを再び食べ始める奈央子を見て、彩乃は小さくため息をもらす。
 「重症なんだね、相変わらず」
 と言われて、奈央子は苦笑した。
 確かに、重症だと思う。
 彩乃以外には言っていないが、国立を落ちたのは実は、不可抗力ではなかったのだし。



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