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【2】-2:近すぎて気づかない

 「——あ?」
 「あ、じゃねーよ。彼女に付き合ってる男がいるのかいないのか、って聞いてんだよ」
 間の抜けた(柊としては正直な)反応に、木下は妙なほど突っかかってくる。訳がわからず反射的に少し理不尽さを感じたが、答えないとまずい気がして、ともかく考えた結果を口にする。
 「……さあ? 少なくとも話は聞いてないけど。たぶんいないんじゃないのか」
 「その頼りない言い方はなんだよ。それぐらい知らないのか?」
 何か心外なことを言われたようで、ムッとする。
 「それぐらいって……あのなあ、なんで俺があいつの男関係をいちいち知ってる必要が」
 「興味ない、ってか?」
 先に結論を言われて、柊は口ごもった。
 その様子を観察して、木下はなにやら納得したような表情になる。しきりに頷きながら、
 「まあなあ、おまえは望月さんがいるからなー……それとも、近すぎて気づかないってやつか」
 「何が言いたいんだよ」
 「彼女を狙ってる奴が結構いる、ってことだよ」
 「はあ?」
 先ほどの反応よりも数倍、間の抜けた言い方だった——と、柊は後から思い返す。
 しかしその時は、本心から訳のわからない気持ちだったのだ。
 「————奈央子を?」
 「そうだよ。まさかおまえ、ほんとに気づいてないのか? 彼女がかなりレベル高いってこと」
 答えない柊に、木下は懇切丁寧に解説し始めた。
 「そもそもがかなりの美人だろう。スタイルもいいし。入試の成績上位に入ったのもかなり噂になってるけど、そういうこと鼻にかけてるって印象は全然ないし、ガリ勉っぽい暗い感じもしないし。それに笑った顔がとにかく可愛いしなあ」
 「……って、木下?」
 「俺以外に、うちのサークルで最低2人は目をつけてる奴がいると思うぞ。学部の知り合いにも聞かれたことあるし」
 そして、柊の目を見ながら、わざとらしい様子でため息をつく。
 「あんな子が近所にいたら、俺だったら速攻で付き合うけどな。もったいないよなー」
 ほんとにもったいない、と木下はなおも呟いている。返す言葉を思いつかないでいるうちに、廊下から数人の話し声が近づいてきた。
 声からすると、サークルの同期の連中らしい。
 木下と二人でそちらを振り向くとほぼ同時に、ドアが開く。思った通りの面々が入ってきて、先ほどの話題に対する柊の思考はいったん中断した。



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