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【3】-14:心配

 そのことを追求されたくない思いもあって、電話やメールにもあまり応じなかった。何度かは必要な質問だったから返信などもしたが、本当に最低限の内容ですませていた。
 当然、こちらからはいっさい連絡していない。
 この10日間それで一貫させていたから、自分から会いに行くことはひどく気まずく感じられる。が、大事な頼まれ事なのだからと、繰り返し言い聞かせるように考えた。
 ……1限から出ていないということは、大学にも来ていないのだろうか。所在を確かめるために携帯にかけてみるが、呼び出し音ばかりで出ない。
 念のため、柊が所属するサークルの部屋にも行ってみた。部屋にいた男子学生に尋ねると、今日は見かけていないという。その木下という学生は、奈央子と柊が幼なじみなのを知っているらしく、サークルで大学祭に出す店について一通り宣伝したのち、
 「学祭来るよね? よかったらうちの店にも遊びに来てよ」
 と、その時作っていた割引券まで気前よく渡してきた。奈央子は愛想笑いをしつつ「時間があれば寄ります」と言って部屋を後にする。
 どうやら、本格的に大学には来ていないらしいと学生会館の階段を下りながら考える。今のところ、講義をサボってまでバイトだとか、そういう必要性はないと思うから(可能性がゼロとは言えないが)……もしかして、体調が悪くて家で倒れてたりするのではないか。その仮定に思い至ると、急に落ち着かなくなってきた。
 要するに、心配になってきた。柊は普段からあまり自炊とかしない性格だし、体調が悪いとすると、なおさら何もやっていない——下手すると、朝から何も食べてないかも知れない。
 学生会館前の広場を通り抜けようとした時、ベンチに里佳が座っているのを見つけた。思わず立ち止まったが、そこを通らないと目指す方向へ行けないので、やむなく足を進める。
 里佳は考えごとをしているようで、幸いこちらには気づかれなかった。なにか、ひどく気落ちしているように見えたが、そのまま通り過ぎる。
 どうしよう、と奈央子は歩きながら悩んだ。なにか材料を買っていこうか。いや、里佳との「約束」もあるし——けど本当に何も食べていないのだったらかわいそうだし  
 あれこれ考えた末、ともかくまず様子を見に行くことにした。状況を確認してからでも対応は決められるし、いくらなんでも一人分の米ぐらいは置いてあるだろう。
 大学側から見ると、柊のアパートの方が最寄り駅は手前になる。路線も同じなので、奈央子は定期を使って途中下車した。



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