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【4】-12:大学祭2日前

 走って走って、大学図書館の前を通り過ぎ、講義棟の一角とは反対側の庭園の中へ入って、ようやく足を止めた。幸い、ここも人の姿はない。
 やや遅れて、彩乃が後ろから駆け込んでくる。
 お互いに、呼吸を整えるため傍らのベンチに腰を下ろし、しばらく無言でいた。
 かなり息が落ち着いた頃、
 「ちょっと、なお——」
 彩乃がいくぶん非難するように言いかけたが、こちらを見てすぐに口を閉ざした。その表情で、奈央子は自分が泣いていることに気づいた。
 勝手に涙があふれてきて、何度ぬぐってもきりがない。奈央子のそんな様子に、彩乃は一転して心配そうな口調で尋ねる。
 「……ねえ、どうしたの。もしかして羽村の言ったこと、嘘だと思った?」
 しばし考えたのち、奈央子は泣きながら首を振った。しかし「じゃ、信じてあげるの」という彩乃の言葉にも、同じように横に振る。
 「——だったら、どうしたいの、奈央子は」
 彩乃の声は戸惑っていた。それを当たり前だと思いながらも、奈央子はただ首を振り続けた。
 「……わかんない。もう全然わかんないの」
 頭の中がぐちゃぐちゃで、何をどう考えたらいいのか、全くわからなかった。

 明後日からの、土日を含めた4日間が、いよいよ大学祭本番である。何かしらの催しに携わる学生は皆、講義の合間を縫っての準備に追われていた。
 柊の所属サークルも例外ではない。今日は午後から、屋台や器具のレンタル・食材販売などの業者が学内に出入りしている。事前に大学の担当を通じて各団体の必要数は発注済みで、それらの搬入・受け渡しが、学生会館前の広場で行われていた。
 早くに引き取りを終えたところは、各所で早々に屋台の設置にかかっている。柊のサークルは、3時限目に体の空いてる人間が少なかったこともあり、多数の団体に混じって必要な物を引き取り終えたのは、4時限目の時間を半ば過ぎた頃だった。
 屋台用の鉄のポールやテントは大きい上にかなり重い。加えて、サークルが出店場所として割り振られたのは、正門の近くである。来客がよく通る場所ではあるだろうが、重くかさばる物を持って行き来するには、学生会館からの距離が少々長かった。
 全て運ぶために、柊はサークルの仲間2名と受け渡し場所との間を何度も往復し、そのたびに長い列に並び、時間と気力をかなり消費した。ようやく終わった頃にはへとへとで、しばらく地面に座り込んでしまった。
 ふと周囲を見ると、4時限目が空き時間らしい学生が数名集まっていて、荷解きを始めている。運んできた品物や数量に間違いがないかを確認しているらしい。




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