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第2章・3

 「ねえ、夏休みどうする、どっか旅行しない?」
 「気が早いなあ、6月になったばっかだよ。その前に前期試験だし」
 「だからじゃん。やなこと乗り切るには楽しみを用意しとかなくちゃ。それに、夏休みなんてどこでも混むんだから、今からでも早いことないよ」
 「あーそっか。じゃあ、行くんなら早めに考えとかなきゃだね」
 「そういうこと。旅行カウンターでパンフもらってこよっか」
 というふうに亜紀と話をして、3日間検討した結果、東北の方に行く2泊3日のパック旅行にした。お互い4月からバイトはしているけど、貯金はたいしてできていなくて、予算的には3・4万というところだったから。
 それでも、自分のお金で友達と旅行するのは初めてだし、どこへ行くにも楽しみな気持ちには変わりない。
 東北だったら8月でも涼しいかな、いやけっこう暑いとこもあるっていうよ、などと着ていく服について相談しながら、旅行カウンターのある建物を出たところで、少し先を行く人が目に留まる。
 亜紀も気づいたようで、ほぼ同時に「あ」と小さく声を上げた。その気配を察したのか、ほとんど間を置かずに向こうもこちらを見る。
 結果的に、3人がほぼ同じタイミングでお互いを見たわけで、挨拶より先に、なんとなく笑い合う流れになったのだった。
 そうして10分後には、学食傍にある喫茶スペースに、わたしと亜紀、祐太先生はいた。
 おごるよ、と先生が言ってくれたので遠慮せず、2人ともケーキセットを注文する。
 「先生のところは、新卒募集ちゃんとするんだ?」
 就職課に用事があって来たという先生の話に、わたしはそう尋ねた。来月学内で催される就職説明会に、先生の会社も参加するらしい。
 「若干名だけどね。人の補充はそれなりにやっとかないと会社のためにならない、っていうのがうちの方針だから」
 「へー、今どき珍しい会社だね。わたし3年後に応募しようかな」
 「でも、給料なかなか上がらないよ? それで結局辞めてくやつが少なくない、ってのも求人出してる理由だし」
 ちょっと声を落とした先生の言葉に、わたしたちは笑った。高校の頃に何度か、亜紀と一緒の時にも会うことがあったから、知らない間柄ではない。
 「どうせなら、もっと上を狙ってみたら。○○産業とかさ」
 先生が何気ない調子で出した会社の名前に、少し心が冷えるのを感じた。

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