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第2章・4

 「……えー、さすがにそこは無理だよ。ねえ亜紀」
 「え。ん、どうかな。でも難しいよね」
 「けど候補のひとつにしてもいいんじゃないかな。茉莉さんが行ってるんだし」
 だからダメなんだって、と言いたいのをこらえ、わたしは言葉を探した。
 「そうかな、でも、すっごく難しいでしょやっぱ。……可能性あると思う?」
 「……まあ、会社ってのは相性もあるからさ。大学と同じで」
 笑い合った顔は、微妙にぎこちなかったと思う。たぶん、空気も。
 「あの、理子の先生がここの卒業生っていうの、初耳でした。何学部だったんですか」
 やや唐突な感じで亜紀が割って入り、しばらくは先生の学生時代の話が続く。学部の話、サークルの話と来て、再び就職の話に戻ってきた。
 「一昨年は今以上に不景気でね、だからなかなか内定がもらえなくて。秋前にやっと、今の会社に決まったんだ」
 その頃の先生がどれだけ大変で辛そうだったか、わたしは知っている。内定をもらえた時、茉莉ちゃんは喜んだけど、両親は会社についてこっそり何か言っていたことも。
 思い返してみると、その頃からかも知れない——先生との、感情の共通点が見えてきたのは。
 「そういえば、茉莉ちゃんとは連絡取れてる?」
 話が途切れた瞬間を見計らい、わたしは尋ねた。亜紀が驚いて息を呑む気配がしたけど、気づかないふりをする。
 先生は、まばたき2回分の間を置いてから、口元に笑みを浮かべつつ答える。
 「うん、電話はそんな多くないけど、メールはよく来るよ。最近は2週おきぐらいに会ってるし」
 「そうなんだ、よかったね」
 嬉しそうに言う祐太先生に合わせて、わたしも同じ口調で返した。同じように笑顔で、繰り返し頷き合いながら。

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