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2009年9月27日 - 2009年10月3日

第2章・6

 「でも、今でもけっこう会うからさ。完全にあきらめるのって難しくて。でも今さら告白とかするつもりはないよ? 先生が困るだけだもん」
 苦笑いしながらも、基本的にはあっけらかんと聞こえるように言ったつもりだった。けれど、亜紀の真面目な顔つきに変化はない。それどころかますます、難しい表情を浮かべる。
 「そういうことじゃなくて。気づいてないの、どれだけ不自然な感じなのか」
 「……不自然って、なにが」
 「どっちもよ。あんたも、あの先生も。茉莉絵さんの話をする時がものすごくわざとらしい」
 内心ひやりとする。口に出しては「そうかな」とあくまでもとぼけていたけど。
 「そうよ、言っちゃ何だけど、単なる元先生と生徒には見えなかった。……なんか、言えない秘密を共有してる同志って感じだった」
 表現が的確すぎて、不覚にもしばらく、ぽかんとしてしまった。
 「やだな、大げさな言い方しないでよ」
 もう一度笑いながらそう返したけど、冗談としてまぎらせるには間が空きすぎていたかも知れない。我ながら、顔も声もちょっとひきつっていたと思う。
 その証拠に、亜紀は最後まで笑わなかった。

 こういう会話はこれが初めてじゃない。
 正確に言えば、祐太先生を好きでい続けていることについては、何度か指摘されていた。
 あきらめないと辛いだけなのは、亜紀に言われるまでもなくわかっていた。けれど、あきらめることと好きでなくなることとは、同じようで実は違う。物理的に離れられてはいないから、気持ちを変えることが難しいのも本当だった。
 そのうちに、先生が、わたしと似たような思いを抱えていることに気づいて——先生に近づけた気がして、なおさら、想いを手放せなくなった。
 今のわたしは、ある意味では先生の一番の理解者だとさえ自負している。
 わたしほど、先生の気持ちがよくわかる人間はいない。だから近くにいるべきなのだと。
 それが不自然な感情だと、理解はしていても。

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