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2009年10月4日 - 2009年10月10日

第3章・1

 大学最初の前期試験、そして2ヶ月の夏休みは、ずっと駆け足をしていたかのように早く過ぎていった。気づくと後期の1週目、イコール各種レポートの提出期限が迫っていて、それらを書き上げると同時に始まったのは、後期講義の選択期間。
 今年の夏は、8月に入ってもあまり暑くならず、曇りの日が多かった。例の東北旅行は、行ってみたらずいぶんと涼しくて、1枚ずつしかない長袖を、亜紀と交互に着ていたぐらいだ。
 その反動なのか、8月が終わるあたりから急に暑くなり、9月はほとんどの日が半袖だった。10月に入ってようやく、晴れた日でも30度近くまで上がったりはしなくなって、誰もがほっとしていた。
 祐太先生からのメールは、そんな頃に届いた。
 家庭教師として教えてもらっていた頃ならともかく、それ以降、先生からメールが来ることはめったにない。もちろんわたしからはよく送っているし、その時にはちゃんと返信してくれるけど。
 だから、5限の講義中に届いたメールの差出人を見た時、めずらしいなと思った。幸い大教室での講義だったから、机の陰に携帯を隠しつつ、開いてみる。
 読んで、少なからずびっくりした。話したいことがあるから近いうちに会えないか、という内容だったから。
 そんなふうに呼び出されたこと自体は、今までになかったわけじゃない。茉莉ちゃんと付き合い始めてしばらくの間は、クリスマスや誕生日プレゼントの相談をされたことがある。けれどそのうち、本人に直接尋ねるようになったみたいで、そういうこともご無沙汰だった。
 第一、クリスマスにはまだちょっと早い気がするし、茉莉ちゃんの誕生日は3月だ。どちらの相談とも思いにくい。
 いったい何だろうと考えて、ふと、心が重くなる予想に行きつく。
 もしかしたら、姉にプロポーズしようと考えているのかも——それで、なにか根回しとか段取りとかを、わたしに頼みたいのかも知れない。
 夏の間に何度か、久しぶりに先生がうちを訪ねてきた時でも、両親の態度は相変わらずだった。出迎えの言葉はこの上なくそっけない、たまたまわたしや茉莉ちゃんが応対した場合だと一度も顔を出しはしない。
 そして帰っていった後、あるいは二人が出かけていって茉莉ちゃんが帰ってきた後には、早く別れてくれないかと言わんばかりの嫌味をぶつぶつと言い続けるのだった。
 そんな時の茉莉ちゃんも、今までと変わりない。特に反駁することもなく、おっとりと受け流している。
 プロポーズしても、姉自身には何の問題もないだろう。唯一にして最大の障害はまぎれもなくうちの両親で、頑固に強硬に反対されたりしたら、それを無視してまで意志を通すのは、先生には難しいかも知れない。

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