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「Like a shooting star」(2)

 3ヶ月前、突然倒れた彼は病院に運ばれ、精密検査の結果、すい臓がんと診断された。
 すぐに手術して一度は退院したけど、経過は期待通りの方向には進まなかった。そして1ヶ月前に再入院した時、お医者さんからはっきりと告知された。
 ——保ってあと、半年程度だろうと。
 「どうかした?」
 「ううん、なんでもない」
 初めてそう聞かされた時のことを思い出すと、今でも、心臓が止まるような感覚に襲われる。
 高校の時に出会って、すぐにお互い好きになった。付き合ってこの夏で2年。同じ大学に行こうと頑張って勉強して、晴れて一緒に合格した。
 彼が大学でいきなり倒れたのは、入学式から1ヶ月半しか経たない頃の出来事だった。あれからだってまだ、3ヶ月しか経っていない。なのに、どうしてこんなに。
 彼は自分では何も言わないし、私に気づかせない努力もしている。それでも、会うたびに少しずつではあるけれど彼が痩せて、体力が落ちていることはわかってしまう。
 さっきだって、息切れをしていた。病室のある最上階から1階分の階段を上がってきただけで。バスケ部で足腰を鍛えていた彼ならありえない疲れ方。
 いずれ、階段を上ること自体できなくなる——自力で歩くことさえも。それは、そんなに遠い日の話じゃない。
 彼の笑顔から目をそらして見上げた空に、ひときわ大きな光がいくつも、続けざまに流れた。きれいすぎて、急に涙があふれそうになる。まぶたを押さえてうつむいたら、肩を抱き寄せられた。
 「我慢しなくていいよ」
 誰より泣きたくて辛いはずなのに、彼はどこまでも優しい声でそう言ってくれる。涙が抑えようもなく流れて、唇を噛んだ。
 神様はよほど意地が悪いに違いない。でなければどうして、彼をこんな目に遭わせたりするものか。肩に回されている腕もその力もぬくもりも、来年の今頃にはどこにも存在しないなんてこと、あるはずない。あっていいはずがない。
 だから神様になんか祈ってやらない。代わりに流れ星に願い続ける。
 企業のスカウトが来るほどにインターハイで活躍して、でも最終的には進学を選んで国立に合格した彼がいなくなったら、人は流れ星のようだったと表現するのだろう——けど誰にも絶対、そんなことは言わせないと私が決めた。
 流れ星はなるものじゃなくて、願うものだから。
 ひとつずつは小さくて一瞬でも、たくさん集まれば大きな輝きに、長い時間になる。
 だから毎晩、流れる星全部に願えば、どんなに可能性が低いことでも叶うかもしれない。この世に100%確実なことなんてないんだと言い聞かせながら。
 彼を失わずにいられるなら何だってする。たとえどんなに衰えて寝たきりになったとしても、そばにい続ける。だからどうか。
 星1個ごとに1日分でいいから、命を延ばしてください。少しでも長く隣にいられるように。手をつないで寄り添っていられるように。
 ……2061年に来る彗星を、二人で見られるように。


                             —終—

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