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2020年2月

2020年2月29日 (土)

第102回2代目フリーワンライ企画/2020.2.29

使用お題:四年に一度
タイトル『四年に一度の「おめでとう」』

 2月29日。閏年にだけ存在する、閏日。
 あまり好きな日ではない。誕生日であるにもかかわらず、だ。
 「どうしてよ、一番お得な日じゃない」
 腐れ縁の幼なじみは言うが、僕にはお得になんか思えない。ていうかむしろ損だ。
 「何言ってんだよ、4年に1回しかないんだぞ」
 閏年以外には存在しない日。カレンダーにはもちろん無いし、人々の意識にものぼらない日付。2月28日の次はすぐに3月1日で、2月29日のことなんか皆、かけらも思い浮かばないだろう。
 誕生日当日が無い、ということは自分も本当は存在しないんじゃないか、そんな気分になったことは数知れない。
 「言うことがオーバーねえ。ちゃんと誕生日祝いはしてもらってたでしょ」
 「そりゃそうだけど、おまえにはわかんねえよ」
 こんな不安定な気分は、ごく普通の日が誕生日の奴らには、絶対わからない。
 「ふーん。じゃ、あたしは部活があるから」
 すい、と立ち上がって教室を出ていく幼なじみ。……クラスは違うし、女子テニスは運動部の中でも時間に厳しいはずなのに、毎日何しに来るんだか。幼稚園の時からのつきあいだけどいまだにあいつのことはよくわからない。
 「……ま、いいか」
 僕だってこれから、サッカー部の練習がある。春の大会のレギュラー決めが近いから、遅刻やらサボリやらするわけにはいかないのだ。

 期末試験の勉強中、かつん、と部屋の窓が鳴った。眠いから聞き違いかな、と思ったがまた鳴る。誰かが何か、石みたいなものをぶつけているらしいと気づいて、こんな夜中になんなんだと多少ムカつきながら窓を開ける。と。
 「おっす」
 「……おっす」
 呆然としつつ応えてから、慌てた。近所とはいえあいつの家は少し離れている。こんな時間に何の用だというのか。
 下りてきて、と手招きされたので上着をひっつかんで階段を駆け下りた。
 「なんなんだよ、いったい」
 尋ねるが、幼馴染はなぜかスマホを真剣に見つめていて答えない。ちょっと待って、のアクションなのか、手のひらを上げたまま。
 今年は暖冬だというけれど、夜はやっぱり寒い。つかんできたのは学校へ着ていく上着で、制服の上に着るから薄めだし、なおさら寒い。
 いいかげんにしてくれないかなと思うと同時に、アラームの音がそこそこ大きく鳴って、文字通り少し飛び上がった。その反射的動作にとっさに恥ずかしくなったが、幼なじみは気にしていないのか気づいていないのか、こちらを見ない。真剣な顔を崩さず、その上でなぜだか目を閉じて、深呼吸までしている。
 大丈夫だろうか、と心配になって顔をのぞき込みかけたらぱっと顔を上げられて、また驚かされた。なんなんだよほんとに。
 「…………と」
 「え?」
 「誕生日おめでとう!」
 叫ぶように言って、そういえばずっと後ろに隠していた左手からラッピングの袋を僕に押しつけて。
 水銀灯に照らされた顔は真っ赤だった。
 「……えと」
 「それだけっ、じゃあおやすみっ」
 踵を返す、という言い方がぴったりな速さでくるりと背中を向け、走り去っていく。さっきよりも呆然とした気持ちで見送ってから、なんとも言えない感情、たとえるなら照れくささみたいな気持ちが湧き上がってきた。
 小学生の頃ならともかく、あいつからプレゼントをもらったことなんて長らくなかった。わざわざ、こんな時間に、日付が変わるのを待ってから。
 4年に1回の誕生日に合わせて。
 ──お得、にしてくれたつもりなのかはわからないが、これまでにない出来事だったのは確かだ。今はまだちょっと、頭が混乱しているけど。
 「……明日、どんな顔してるつもりなんだろ」
 そう言う僕も、学校であいつと会った時にどんな顔をすべきか、決められないでいるのだった。


注釈:Twitter上の企画「2代目フリーワンライ企画」第102回への参加作品です。
毎週(でない時もある?)土曜日の夜10時に、運営アカウントから5つほど出されるお題の中から1つ以上選んで、10時半~11時半の1時間で書き上げるという企画。私は今回が初参加でした。
私の性癖というか、よく使う要素(恋愛、幼なじみ、サプライズなど)を詰め込んだ感じの話になりました~(笑)

2020年2月 1日 (土)

Twitter300字SS/お題「包む」

タイトル「幸せを包む仕事」

「お包みしましょうか」
「お願いします」
百貨店の宝飾品売場に転職して半年。ラッピングの腕も上達して、ほぼ失敗なくできるようになった。買う人の幸福も包んでいる気がする、楽しい作業だ。
ラッピングお願いしまーす、の声に応じると、また一組のカップルが。
「────」
 交わした視線の意味が気づかれていないことを願った。接客用の笑顔で、包んだ小箱を手渡しながら「おめでとうございます」と言う。中身が婚約指輪として売れる商品だと知っていたから。
「ありがとうございます!」
 嬉しそうな女性の隣で軽く会釈し、くるりと背を向けた姿。見送ってからバックヤードに行き、少しだけ泣いた。私が贈られなかった指輪をもらう彼女への羨望で。


注釈:Twitter上の小説企画「Twitter300字SS」参加作品です。
今回は単発作品を書きました。……前に「演じる」で書いた時にも思いましたが、どうして単発で書くと悲恋ものになるんだろうか、私(苦笑)
よろしければご感想・ご意見など、一言でも頂けますと幸いです。

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