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2020年5月

2020年5月30日 (土)

第115回2代目フリーワンライ企画/2020.5.30

使用お題:餌付けすればいいとでも?
タイトル『レモンシフォンと謎の手紙』

 「レモンシフォンケーキ!」
 カフェの椅子に座るやいなや、ハルが叫んだ。慌てて店員さんが飛んできてオーダーを取る。一連のやり取りを、私は縮こまって聞いていた。周囲から集まる視線が痛くて。
 「日和(ひわ)ちゃん、何も頼まないの?」
 黙りこくっている私に、ハルがそう聞いた。恥ずかしくて口を開く気になれなかったが、店員さんの目に急かされて「……アイスティーお願いします」とやっと言う。
 まだ5月半ばだけど、陽気はすでに初夏だ。行きつけのカフェでも、テラス席に座る人がこの前来た時より増えている気がする。季節は確実に移り変わってゆくけれど、春夏秋冬変わらないのが、こいつの食欲である。特に甘いものには目がないところも。
 運ばれてきたシフォンケーキを、ハル──春山晴太郎(はるやませいたろう)は、あっという間にたいらげた。お代わりを頼むために店員さんを呼ぶ姿に、私、松本日和はため息をわざと大きくついてやる。それぐらいしないと気持ちがおさまらない。だがあからさまに文句を言うわけにもいかない。
 今日ここに呼んだのは、私の方なのだし。
 なんとも業腹だが、ハルに相談しなければならないことがあるのだ。
 去年のことだけど、私が家庭教師として勉強を教えていた子がちょっとしたトラブルに遭い、それをハルに助けてもらったことがある。今年、無事に大学に入学したその子が、なにやらまた困ったことになっているらしく、私に電話してきたのだった。
 その際、先生の幼なじみさんにも手伝ってもらえたら、というのがその子直々の申し出でもあった。去年の件以来、彼女はハルをずいぶん信頼しているらしい。
 わからなくはない。あの時のハルは私でも見たことのないような男らしさを発揮していたし、何より見た目が目立つ。周りより頭一つ抜きんでいる長身に加えて、そこそこ見られるルックスをしている。客観的に見ればイケメンの部類に違いない。中身はこんなのだけれど。
 3個目のケーキを胃に納めたハルはやっと人心地ついたのか、コーヒーを飲んでいる。ちなみにこれは2杯目。
 「それで、話って?」
 促され、私は「奏子ちゃん、覚えてるでしょ」と切り出した。
 「カナコちゃん……ああ、日和ちゃんがカテキョウやってた」
 「そう。あの子がね、今年大学入って、まあ勉強はうまくやってるんだけど、困ったことが起きてるって」
 「困ったこと?」
 にわかに、ハルの目が真剣みを帯びる。全教科成績が良いタイプではないけど(だから1年浪人して、こいつも新大学生なのだけど)、限られた分野にはやたらと頭がよく回り、勘も鋭い。
 「変な手紙をもらうらしいの。いつに誰と会ってたとか、家に何時に帰って何時に寝たとか、行動を全部見張ってるみたいな内容の」
 「淡々とだけどやたらと詳しく書いてて、気持ち悪いんだって。でも付けられてる感じとかは気を付けてる限りではないらしいし、誰がやってるのか全然わからなくて怖いって」
 ハルは口元にこぶしを当てて、なにやら考えている様子である。話が進むにつれて頷きの数が多くなっているのは、何か思いついたことでもあるのか。
 私がアイスティーを飲み終える前に、ハルは結論を出したようだった。
 「それってさ、絶対に身近な人の仕業だよ。でなきゃそんなに詳しく知れない」
 「身近、って」
 「最近親しくなった人、特に男とか、いるんじゃない?」
 はっとする。そういえば、学科の演習授業で組んで親しくなった、男子学生がいると言っていなかったか。聞き上手だからついつい、いろんなことを話してしまうのだとも。
 「いるんなら、そいつには気を付けるように言った方がいいよ、奏子ちゃんに」
 「……わかった、それとなく話を聞いて確認してからね」
 「他に相談は? ない? じゃあ、すみませんケーキとコーヒーもうひとつー」
 途端にまた、子供のような無邪気さで、追加オーダーを叫ぶ。ああ、周りの視線が痛い……幼なじみの餌付けは、確実だけど毎度高くつく。


注釈:Twitter上の企画「2代目フリーワンライ企画」第115回への参加作品です。
毎週(でない時もあるかな?)土曜日の夜10時に、運営アカウントから5つほど出されるお題の中から1つ以上選んで、10時半~11時半の1時間で書き上げるという企画。私は今回が2回目の参加。
拙作『チョコレートケーキとさみしいきもち』シリーズ(エブリスタに掲載)の、主人公二人を登場させました。実は、短編の3話目にしようかな、と寝かせていたネタでもあります。いずれ時間を取って、ちゃんと短編として仕上げたいと思います。

2020年5月28日 (木)

現状と今後:20.5.28

こちらに書くのは、たいへん久しぶりになります。約2年9か月ぶり。
更新があるんじゃないか、と定期的に(たまにでも)訪ねてくださっていた方々には、大変失礼をいたしました。

現状、作品を載せている場所は、投稿サイトが主となっております。
その中でもメインとしているのは、エブリスタpixiv。新作はだいたい、このどちらかか、もしくは両方に載せています。
なので、新しいものを少しでも早くお読みになりたい場合は、そちらをチェックしていただくのが確実です。

……とはいえ、せっかく確保している場所なので、ここももう少しなんとかしたいな、とは思っております。新作を載せるのは手が回らなくて無理でも、なにかしらの旧作アップくらいはしたい。
まずは、毎月書いているTwitter上の企画「300字小説」の保存と公開を、こちらに移すかもしれません。
その他の作品掲載についても、しばらく考えてみますので、お待ちください。

2020年5月 2日 (土)

Twitter300字SS/お題「書く」

タイトル「書けない気持ち」

突然の休講で、1時限分の時間が空いた。まだ午前中、サークルの部屋に行こうかとも考えたが、あまり気が乗らない。手近のベンチに座り、何をするでもなく携帯をいじる。
ふと、メールソフトを起動した。新規作成画面を開き、最近知ったアドレスを呼び出して入力。
……そこからが、進まない。何と書き始めればいいのか。
「元気?」ありきたりだ。「用はないけどどうしてるかなと」書きづらい。

──「会いたい」。

伝えたい本心はあるけれど、正直に書くのは憚られる。彼女の戸惑う顔が目に浮かんでしまうから。
ため息をついて上げた視線の先に。
「……あ」
言葉で書くよりも頭に思い描くよりも、立ち上がり駆け寄った行動に、如実に気持ちが表れた。


注釈:Twitter上の小説企画「Twitter300字SS」参加作品です。
ちょっと久々に、といいますか、既刊『anniversaire』シリーズからの派生作品です。付き合い始める前、大学1年の5~6月頃のイメージで書きました。

(『anniversaire』シリーズは、novelist.jp、小説家になろう、エブリスタ、pixiv、カクヨムにて掲載しております。pixivでは「matsuya0510」、それ以外では「まつやちかこ」にてユーザー検索の上、作品一覧からご覧ください)

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