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2020年7月25日 (土)

第123回2代目フリーワンライ企画/2020.7.25

使用お題:全部
   階段の踊場
   ガリガリ
   おててつないで
   慣れないことするからだ
   バラしたのはお前か
タイトル『終業式の宣言』

 キンコンカンコーン、と鳴ったチャイムは4時半のもの。直後スピーカーから、下校時刻を知らせる音楽が流れ出す。
 「お、もうこんな時間か。よし、今日は終了ー」
 顧問の理科教師が部活の終わりを宣言する。
 「これで今年度の活動も終わりだ。西崎、ご苦労さんだったな」
 名指しでそう言われたのは、自分が進級と同時に、転校するからだ。慣れ親しんだ科学部の面子とも、この理科室とも今日でお別れ。顧問に「餞別にやろう」と手渡されたのは、中学3年生向けの理科の参考書。良い本だからしっかり勉強しろよ、とひたすら真面目な顧問らしい一言が添えられた。
 「じゃあ、他の皆はまた新学期にな。お疲れさん」
 「おつかれっしたー」
 男子ばかり、10人ほどの面々が唱和する。片付けを終えた奴からめいめい、鞄を担いで足早に出ていく中、なんやかやで最後になってしまった。再度、顧問と挨拶をして、夕日が差し込む廊下を速足で歩いた。
 3階から2階へ降り、さらに1階に続く階段の手前で、思わぬ相手に遭遇する。
 「……あ」
 「……おう」
 職員室の方向から歩いてきたのは、同じクラスの本原。幼稚園から同じ所に通っていて、小学校時代は、男子女子の対立のたび代表になっていた同士だ。だからわりと本気の口喧嘩をしたことも少なくない。
 そんな、ある意味で半分同性のような感覚でいた相手に会って、お互い若干口ごもってしまうようになったのは最近のこと。1ヵ月ちょっと前のバレンタインに、本原からチョコを渡されて以来だ。義理さえもらったことがなかったから、かなり驚いた。が、箱の中身を見た時はその比ではなかった。どれだけ鈍感でもわかるだろう、といった感じの、気合の入った手作りチョコだったのだ。
 以来、本原との間には、微妙な空気が流れている。今も、鉢合わせして立ち止まって、なんとなく、階段を下りる権利を譲り合うような仕草をしてしまっている。埒が明かない、と思いきって1段目に踏み出すと、本原もほぼ同じタイミングで足を出していた。
 ……そのまま、なりゆきで二人並んで、階段を下りていってしまう。
 踊り場の大きな窓からは、夕焼け空とは対照的に暗くなり始めた空が見えた。あのあたりに光っているのは一番星だろうか、それとも何か惑星か。
 なんて考えつつ少し足を止めていたら──急に手をつかまれて、びっくりした。見ると、本原の右手が、自分の左手を握っている。え、と本原に視線を向けると、頬が真っ赤になっている。
 「…………」
 「…………」
 つかまれた手を、一度離した。本原がバツの悪い表情になる前に、手を、つなぐ形に組み直す。本原の顔はさらに、耳まで赤くなった。たぶん、自分も同じだろう。
 手をつないだまま、残りの階段を、一歩先に行く形で一緒に下りる。何してんだろう、という疑問と、まあ別にいいか、という思いが混ざり合っていた。
 と。
 いきなり、後ろに手を引かれた。本原が立ち止まったのだと気づいて振り返り、見開いた目の視線を追って、階段下にいる人間の存在に気づいた。
 ガリガリ君、と呼ばれる坊主頭で逆光でもすぐにわかった。同じクラスの堀田だ。当然ながらというか、驚愕の表情を浮かべている。3人とも数秒間フリーズしていたのち、はっ、と一番先に我に返ったのは堀田で、こっちが声をかける前にバタバタと走って行ってしまった。

 翌朝、教室に入った途端に大騒ぎに出迎えられた。
 黒板には誰かが描いた相合傘、下にある名前は当然、自分と本原。はやし立てる男子とひそひそ会話しながらもきゃあきゃあ言い合っている女子。
 バラしたのお前だな、と人垣の中に堀田を探すと、奴はふいと横を向いて知らぬふりを決め込んでいる。
 クラスの連中が、自分が入ってきたときのようにどよめいた。振り向くと予想通り、本原が入り口で固まっている。奥さん来たぞ、と誰かの声がして、また女子が「きゃーっ」と騒ぐ。何人かの、本原の友達らしき女子は駆け寄ってきて、何かしら本原に声をかけていた。事態を把握したのか、今や涙目になっている本原。
 ……やれやれ、と思った。まったく、慣れないことをするからこうなる。
 反省を覚えつつ、覚悟を決めた。後ろへ引き返し、女子の輪の中にいる本原の手を引っ張って、二人で教壇に上がった。
 驚きの空気が広がっていくのがはっきりわかる中、宣言した。
 「堀田、お前が見た通り、そういうことだから。皆もよろしく」
 静まり返る教室。5秒後には、ひときわ大きいどよめきに満たされた。
 つないだ手をほどかないまま左を見ると、半分泣き顔の本原が、口をぱくぱくさせている。昨日並みに真っ赤な顔で。
 ──しょうがない、この顔を、可愛いと思ったんだから。
 とはいえ後のフォローがものすごく大変そうではある。それはまあ、終業式の間に急いで考えることにしよう。


注釈:Twitter上の企画「2代目フリーワンライ企画」第123回への参加作品です。
毎週土曜日の夜10時に、運営アカウントから5つほど出されるお題の中から1つ以上選んで、10時半~11時半の1時間で書き上げるという企画。今回が7回目の参加。前回に引き続き、お題全部を使いました。
内容は前回と違い現代もの、中学生主人公の恋愛ものです。……甘酸っぱい感じを目指してみましたが、いかがでしたでしょうか。思春期の少年少女って、想像するのはまだしも、書くのはけっこう難しいなあ(苦笑)……まだまだ勉強せねば。

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